ラクマも宜しくお願い致しますm(__)m
![iStock-1135299092_e]()
Image by Usis/iStock
世の男性に、男性という宿命を背負わせたのはY染色体だ。いわば男らしさのシンボルであるY染色体であるが、じつのところ強くもたくましくもないのだということが明らかになりつつあるそうだ。
Y染色体は急速に退化を続けている。仮に退化がこのまま続いたとしたら、Y染色体は460万年もすれば完全に失くなってしまうという。
まだ十分な長さが残されていると思うかもしれないが、地球に生命が誕生して35億年が経過していることを思えば、なんとも儚い。
Y染色体の根本的な欠陥
Y染色体は「SRY」という哺乳類の性別をオス(XY)に決定する遺伝子を持っている。だが、それ以外特に目立った遺伝子はなく、唯一Y染色体だけが、染色体の中で生存には関係していない。女性がXXでも生きられるのはこうしたわけだ。
さらにY染色体は急速に退化してきた。このために女性には完璧に正常なX染色体が2つ残されている一方で、男性にはX染色体としなびたY染色体が残された。
Y染色体は昔からこうだったわけではない。最初の哺乳類が登場した1億6600万年前にはまったく事情が違った。初期のプロトY染色体はもともとX染色体と同じサイズで、同じ遺伝子を持っていたのだ。
だが、Y染色体には根本的な欠陥があった。他の染色体が各細胞に2つのコピーを持っているのに対して、Y染色体には1つのコピーしかなく、それを父から息子へと受け渡すシステムだったことだ。
このためにY染色体には遺伝的組換え、つまりは有害な遺伝子の突然変異を取り除いてくれる”シャッフル”が各世代で起こらない。
このためにY染色体は退化を続け、やがてはゲノムから消えさるという宿命を背負うことになった。
![4_e]()
X染色体に比べかなり小さいY染色体(赤枠部分)National Human Genome Research Institute
運命に抗うメカニズム
しかし最近の研究によれば、Y染色体には、この運命に抗う素晴らしいメカニズムが備わっているようだ。
例えば、『ProS Genetics』(2017年8月28日付)に掲載された研究では、男性62名からY染色体を採取し、それを部分的にDNAシーケンシングにかけた。すると、大規模な構造的再配列が行われ、「遺伝子増幅」できることが判明した。これによって、健康な精子の機能を促進し、喪失を緩和する遺伝子のコピーを取得できるのだ。
この研究はさらに、Y染色体が「パリンドローム(回文配列)」という珍しい構造を持つことも明らかにしている。
つまり前から読んでも後ろから読んでも同じ配列があり、これが退化を予防するうえで一役買っているのだ。そこには高い頻度で「遺伝子変換イベント」が記録されており、これが正常な遺伝子のバックアップとなって、破損した遺伝子の修復する。
人間以外の種では、Y染色体の遺伝子増幅は一般的な仕組みであるという証拠が集まりつつある。そして増幅された遺伝子は精子の生産や(少なくともげっ歯類では)子供の性別の割合の調整に大切な役割を果たしている。
『Molecular Biology and Evolution』(2017年9月25日付)の研究によれば、こうしたマウスにおける遺伝子コピー数の増加は、自然選択の結果であるという。
![iStock-502836820_e]()
Image by Christoph Burgstedt/iStock
Y染色体は生き残れるか?
Y染色体の運命について、学会は意見を二分している。残ると考えるグループは、その防衛機構は素晴らしいもので、絶滅を回避できるだろうと説く。
他方、絶滅すると考えるグループは、そうした機構は結局のところ悪あがきのようなもので、多少時間稼ぎをすることはできても、運命に抗うことはできないと説く。
絶滅派の強力な擁護者である豪ラ・トローブ大学のジェニー・グレイブズ氏もやはり、長期的に見れば、Y染色体の絶滅は避けられないと主張する。
2016年の論文で、オキナワトゲネズミとモグラレミング属の仲間がY染色体を完全に失っていることを指摘。Y染色体上の遺伝子の喪失や作成は、必然的に繁殖力の問題につながっていくと論じた。そして、最終には完全に新しい種を誕生させることになるかもしれないという。
![iStock-801095738_e]()
Image by polesnoy/iStock
それでも男性は死なず
人間の男性の場合、仮にY染色体が失くなってしまったとしても、必ずしも男性まで消えてしまうわけではない。何しろそれを完全に失ってしまっている種でさえ、子孫を残すには相変わらずオス・メスの両方が必要なのだ。
こうした場合、オスであることを決めるSRY遺伝子は、別の染色体に引っ越してしまう。よってそうした種では、Y染色体がなくてもオスが生まれる。
しかし、新しい性染色体(SRYの引っ越し先)は、やはり遺伝的組換えができないために、Y染色体と同じ滅びの運命をたどることになる。
![light-bulb-1042480_640_e]()
Image by Jonny Lindner from Pixabay
自然生殖以外の方法がスタンダードに?
人間に関して面白いのは、普通の生殖を行うにはY染色体が必要でありながら、生殖技術さえ利用すれば、それが持つ遺伝子の多くは要らないものであるという点だ。
つまり、近い将来、遺伝子工学がY染色体の代わりを担うようになり、女性同士のカップルや不妊の男性でも子供を授かれるようになるかもしれないということだ。
これは遺伝子の研究でも大いに注目され、熱い議論が交わされている分野だが、さしあたってはあまり心配する必要もないだろう。
そもそもY染色体が本当に消えてしまうのかどうかだってはっきりしないのだ。仮にそうなるのだとしても、ここで説明したように、おそらく男性はこれまで通りの生殖を行えることだろう。
さらに、一握りの幸運な男性が”種馬”として珍重されるような未来が水平線の彼方にチラついているようなこともない。Y染色体の運命がいかなるものであれ、すべて460万年後のことだ。
References:What happens to men if the Y chromosome disappears? - Big Think/
☆もともとはメスしかおらなんだやんけ!

Image by Usis/iStock
世の男性に、男性という宿命を背負わせたのはY染色体だ。いわば男らしさのシンボルであるY染色体であるが、じつのところ強くもたくましくもないのだということが明らかになりつつあるそうだ。
Y染色体は急速に退化を続けている。仮に退化がこのまま続いたとしたら、Y染色体は460万年もすれば完全に失くなってしまうという。
まだ十分な長さが残されていると思うかもしれないが、地球に生命が誕生して35億年が経過していることを思えば、なんとも儚い。
Y染色体の根本的な欠陥
Y染色体は「SRY」という哺乳類の性別をオス(XY)に決定する遺伝子を持っている。だが、それ以外特に目立った遺伝子はなく、唯一Y染色体だけが、染色体の中で生存には関係していない。女性がXXでも生きられるのはこうしたわけだ。
さらにY染色体は急速に退化してきた。このために女性には完璧に正常なX染色体が2つ残されている一方で、男性にはX染色体としなびたY染色体が残された。
Y染色体は昔からこうだったわけではない。最初の哺乳類が登場した1億6600万年前にはまったく事情が違った。初期のプロトY染色体はもともとX染色体と同じサイズで、同じ遺伝子を持っていたのだ。
だが、Y染色体には根本的な欠陥があった。他の染色体が各細胞に2つのコピーを持っているのに対して、Y染色体には1つのコピーしかなく、それを父から息子へと受け渡すシステムだったことだ。
このためにY染色体には遺伝的組換え、つまりは有害な遺伝子の突然変異を取り除いてくれる”シャッフル”が各世代で起こらない。
このためにY染色体は退化を続け、やがてはゲノムから消えさるという宿命を背負うことになった。

X染色体に比べかなり小さいY染色体(赤枠部分)National Human Genome Research Institute
運命に抗うメカニズム
しかし最近の研究によれば、Y染色体には、この運命に抗う素晴らしいメカニズムが備わっているようだ。
例えば、『ProS Genetics』(2017年8月28日付)に掲載された研究では、男性62名からY染色体を採取し、それを部分的にDNAシーケンシングにかけた。すると、大規模な構造的再配列が行われ、「遺伝子増幅」できることが判明した。これによって、健康な精子の機能を促進し、喪失を緩和する遺伝子のコピーを取得できるのだ。
この研究はさらに、Y染色体が「パリンドローム(回文配列)」という珍しい構造を持つことも明らかにしている。
つまり前から読んでも後ろから読んでも同じ配列があり、これが退化を予防するうえで一役買っているのだ。そこには高い頻度で「遺伝子変換イベント」が記録されており、これが正常な遺伝子のバックアップとなって、破損した遺伝子の修復する。
人間以外の種では、Y染色体の遺伝子増幅は一般的な仕組みであるという証拠が集まりつつある。そして増幅された遺伝子は精子の生産や(少なくともげっ歯類では)子供の性別の割合の調整に大切な役割を果たしている。
『Molecular Biology and Evolution』(2017年9月25日付)の研究によれば、こうしたマウスにおける遺伝子コピー数の増加は、自然選択の結果であるという。

Image by Christoph Burgstedt/iStock
Y染色体は生き残れるか?
Y染色体の運命について、学会は意見を二分している。残ると考えるグループは、その防衛機構は素晴らしいもので、絶滅を回避できるだろうと説く。
他方、絶滅すると考えるグループは、そうした機構は結局のところ悪あがきのようなもので、多少時間稼ぎをすることはできても、運命に抗うことはできないと説く。
絶滅派の強力な擁護者である豪ラ・トローブ大学のジェニー・グレイブズ氏もやはり、長期的に見れば、Y染色体の絶滅は避けられないと主張する。
2016年の論文で、オキナワトゲネズミとモグラレミング属の仲間がY染色体を完全に失っていることを指摘。Y染色体上の遺伝子の喪失や作成は、必然的に繁殖力の問題につながっていくと論じた。そして、最終には完全に新しい種を誕生させることになるかもしれないという。

Image by polesnoy/iStock
それでも男性は死なず
人間の男性の場合、仮にY染色体が失くなってしまったとしても、必ずしも男性まで消えてしまうわけではない。何しろそれを完全に失ってしまっている種でさえ、子孫を残すには相変わらずオス・メスの両方が必要なのだ。
こうした場合、オスであることを決めるSRY遺伝子は、別の染色体に引っ越してしまう。よってそうした種では、Y染色体がなくてもオスが生まれる。
しかし、新しい性染色体(SRYの引っ越し先)は、やはり遺伝的組換えができないために、Y染色体と同じ滅びの運命をたどることになる。

Image by Jonny Lindner from Pixabay
自然生殖以外の方法がスタンダードに?
人間に関して面白いのは、普通の生殖を行うにはY染色体が必要でありながら、生殖技術さえ利用すれば、それが持つ遺伝子の多くは要らないものであるという点だ。
つまり、近い将来、遺伝子工学がY染色体の代わりを担うようになり、女性同士のカップルや不妊の男性でも子供を授かれるようになるかもしれないということだ。
これは遺伝子の研究でも大いに注目され、熱い議論が交わされている分野だが、さしあたってはあまり心配する必要もないだろう。
そもそもY染色体が本当に消えてしまうのかどうかだってはっきりしないのだ。仮にそうなるのだとしても、ここで説明したように、おそらく男性はこれまで通りの生殖を行えることだろう。
さらに、一握りの幸運な男性が”種馬”として珍重されるような未来が水平線の彼方にチラついているようなこともない。Y染色体の運命がいかなるものであれ、すべて460万年後のことだ。
References:What happens to men if the Y chromosome disappears? - Big Think/
☆もともとはメスしかおらなんだやんけ!