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進化とは、地球上に生命が現われて以来、その命を形づくってきた絶え間ない前進のプロセスだ。歴史と同じで、このプロセスは途絶えることはない。
進化は突然起こるわけではなく、何世代にも渡って長い時間をかけて徐々にゆっくりと進んでいくが、中には急速に進化を遂げる場合もある。
因果の法則を具体化するように、進化は、まずは生き残って、異なる環境条件でも繁栄できるために必要な強みを生命体に与えることで機能する。
ゆえに、まわりの環境の変化が早ければ早いほど、さまざまな変化についていくために、生命はなるべく早くそれに適応していく必要がある。
ここでは注目すべき急速な進化の直接例を見ていこう。
1.雑草の変化(都市で生き延びるよう進化)
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References:nature
都市部では、ほとんどの地面はアスファルトやコンクリートで覆われている。植物は、露出している土壌がなんであれ、見つけた場所でなんとかやっていかなくてはならない。
都市によっては、植物が生きていくことができる土壌は地面全体のわずか1%というところもある。生き残ることができる場所が不足しているため、種を拡散する方法を変え始めた植物もある。
フランス、モンペリエにある国立科学研究センターの研究部長、ピエール=オリヴィエ・シェプトーは、デイジーに似た雑草が都市で成長している様子を観測している。
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この植物は、2種類の種を活用している。ひとつは、重たく地面にまっすぐ落ちる種。もうひとつは、軽くて風に乗ってさまざまな場所へ飛んでいく種だ。
田舎で同じ種を比べてみると、モンペリエの都市部で生きているものは、風に飛ばされるものよりも重たい種を好むようになった。さらに、この変化のプロセスはわずか12年の間に起こったという。
変化の理由は、種が風に飛ばされてどこかの駐車場などに落ちるよりも、親の植物のそばの同じ土壌に落ちるほうが、繁殖の可能性がより高くなることだ。
しかし、この傾向がずっと続いて、都市部の植物が軽いほうの種を作らなくなってしまったら、また別の危険が出てくるかもしれない。
マイナス面は、そこの環境が変化したら、その場所にある個体群の残りが脆弱になってしまうことだ。 長距離の分散の可能性を諦めてしまったら、肥沃な新しい土壌に到達することがまったくできなくなってしまうだろう。
2.捕食者と超捕食者(人間に対応したピューマ)
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References:popsci
ピューマは捕食者の頂点にいて、野生環境の食物連鎖におけるトップの立場は安泰だと考えがちだ。
物陰から獲物にそっと忍び寄り、ふいに飛びかかる最強の動物であることは事実だが、ピューマは、自分たちより優れた別の捕食者、つまり人間が君臨しているという厳しい現実を知っている。
何百年もの間、人間にハンティングされて、ピューマは人間に対する極めてまっとうな恐怖を抱いた。
カリフォルニアでのピューマに関する研究では、怖いものなしのはずの彼らが、遠くから人間の声が聞こえただけで逃げ出すことがわかっている。たとえ、仕留めた獲物を味わっているときでさえ、逃げるという。
動きに反応するセンサーカメラとオーディオ装置を、置き去りにされた最近の獲物のまわりに設置し、ピューマが戻ってくるのを待った。すると、装置が作動すると、ピューマは一目散に逃げ出した。
この実験のために、人間がしゃべるさまざまなラジオのトークショーのコマが使われた。ホストは声を荒げているわけでも、煽られているわけでもなく、穏やかに話しているだけだ。実験に矛盾がないようにするために、録音の半分はカエルの鳴き声を使った。
その結果、ピューマはカエルの声にはなんの反応も示さなかったが、人間の声が聞こえると一瞬にしてその場で凍りつき、すぐに逃げ出した。あまりに怯えて、獲物を諦めて逃げて行き、何日たっても戻ってこなかったピューマもいた。
これは行動進化の一種とみることができるだろう。このように人間を怖れる行動が、彼らの遺伝子にすでに組み込まれていたのか、子どもの頃に親から教え込まれたものなのかは、まだわからない。
にもかかわらず、ピューマは人間が彼らを怖れるよりもずっとわたしたち人間を怖れていることは確かだ。とはいえ、まだピューマの背中に乗ろうとするべきではない。
3.海の魚の小型化
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References:nature
世界が現在直面している乱獲の問題は深刻だ。統計では、このままの状態が続くなら、2048年までに世界の海からは商業漁業に対応できる魚はまったくいなくなってしまうという。この世界的な食糧供給を保護するために、いくつかの措置が講じられた。
この数十年、最小サイズの魚だけは捕獲できるが、小さめの魚は少なくとも一回か二回は繁殖を待ってから獲るべきだという規制ができた。
論理的には、こうした法律で世界の漁業はなくならないはずだが、今度は漁師は大きめの高価な魚に目を向けるようになった。
すると1980年代、心配な報告があがってきた。そもそも善意のために制定されたこの法律を受け入れた漁師が予期しなかった現象が起こったのだ。
世界の漁業が崩壊しつつあるだけでなく、これまでいた魚の体の大きさが以前よりも小さくなっているのだ。
まず、少し大きな魚がよりたくさんの卵を産んで、結果的に子孫が増える。こうした小魚が獲られてしまうと、その魚の群れ全体が再び数を補充するのが大変になる。さらに、何十年にわたって行われてきたサイズ別に魚を獲る漁業のせいで、魚が正常な環境にいたときよりも早く成熟してしまう現象を引き起こしている。
つまり、乱獲されていたおとなの魚は、今、70年代よりも体の大きさや体重が50~60%も小さくなっているのだ。
大きな魚は捕まっても、小さな魚は魚網をすり抜けることができる。こうした生き残りのための環境適応の傾向はこのまま続くだろう。
この傾向は気候変動によっても、さらに促進されている。温かい水には酸素が少ないため、魚たちは環境の変化に適応するためにやはり体を縮めなくてはならないからだ。
4.モスクワの野良犬の進化
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References:popsci
モスクワの地下や通りで、なんともおもしろい現象が起こっている。現在、この町にはざっと3万5000匹の野良犬がいる。これは300人の市民におよそ1匹の割合だ。
こうした状況が始まったのは、19世紀半ばにさかのぼるという。
進化生態学研究者のアンドレイ・ポヤルコフは、これら野良犬をしばらく観察していて、おもしろいことに気がついた。この野良犬たちは、急速に進化して、都市環境にうまく適応したというのだ。
時間をかけて観察していると、野良犬たちからはブチ模様が消え、尻を振らなくなり、人懐っこさを失う傾向が強くなったようだ。
彼らは都市で生き延びるために、4つのニッチな特徴を発達させた。ポヤルコフはそれらを番犬、スカベンジャー犬、野犬、物乞い犬と分類した。
いわゆる番犬は、モスクワ中にたくさんあるセキュリティゲートを守る警備員の半野生アシスタントとして生きている。彼らは警備員のことを、番犬としての見返りにエサをくれる主人だとみなしている。
スカベンジャー犬は、町のゴミ捨て場をうろついているイヌたちのこと。
野犬は、ネズミやラット、鳥、ネコ、その他小動物を狩って暮らす。
物乞い犬は特に興味深い。彼らは食べ物をくれそうな親切な人間を見極める能力を発達させ、地下鉄で移動する能力をマスターし、自分たちのテリトリーのある地区の駅をちゃんと認識している。
Moscow's Stray Subway Riding Dogs
群れを支配するリーダー犬は、たいてい最強のイヌがなるものだが、これら物乞い犬は生存のために力よりも頭に頼っているため、小さなイヌでもリーダーになることができる。必ずしも最強のイヌである必要はないことを証明しているのだ。
宗教の儀式に使用される魚の進化
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References:livescience
特定の種類の魚が急速に進化したり滅亡したりするのに、宗教が関与するようなことがあるのだろうか?
毎年、メキシコのある洞窟では宗教儀式が行われていて、ここで地元民がさまざまな植物から抽出した自然毒で水を汚染している。
この洞窟に生息していた魚は、アトランティック・モーリーとして知られる種で、毒のせいで麻痺して水面に浮くようになり、それを地元民が村のために集める。これは何世代にもわたって受け継がれてきた伝統で、この魚は地下世界の神々からの贈り物とみなされる。
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研究者グループは、この魚を分析し、その地域のほかの場所に住む同じ種と比較してみた。すると、洞窟の魚はほかのアトランテイック・モーリーよりも50倍も抵抗力が高いことがわかった。
確かに、ほとんどは毒で死んでしまったが、その程度の毒素量には適応して、宗教儀式を生き抜き、その遺伝子を次の世代に受け継いだものもけっこういた。
アトランティック・モーリーを保護しようと、政府は近年、この特殊な儀式を禁止しているが、進化のほうが一歩先をいっていたのかもしれない。
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